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top:Hoffmanの理論

Hoffman(1987)のしつけ理論

マーティン・ホフマン(Martin L. Hoffman)が1987年に提唱した「しつけ(養育的介入)の3分類」について、紹介します。

発達心理学者マーティン・ホフマン(Martin L. Hoffman)は、1987年の研究において、「親のしつけ(介入スタイル)が子どもの道徳性や共感性の発達にいかに大きな影響を与えるか」を提唱しました。

ホフマンは、親が子どもの問題行動を修正する際に用いる「しつけの技法」を大きく3つのタイプに分類しています。それぞれの特徴と、子どもの心理・行動へ及ぼす長期的影響について詳しく解説します。

1. 力による権力行使のしつけ(Power Assertion)

身体的罰(体罰)や怒鳴り声、特権・おもちゃの剥奪、力づくでの強制などがこれに該当します。

短期的効果(即時性):強い恐怖や不快感を与えるため、親の指示に従わせる即時的な抑制力は非常に高いです。

長期的影響とメカニズム:
道徳性の内在化が生じにくい:「なぜそれが悪いことなのか」という理由ではなく、「見つかったら怒られる・罰せられる」という外面的な回避行動(罰の回避)が支配的になります。そのため、親や監視者がいない場面では自律的な行動をとりにくくなります。

情緒的不安定と攻撃性の誘発:恐怖や不満、理不尽さが先行することで子どもにストレスを与え、感情の自己コントロール能力(感情調節機能)の発達を阻害する恐れがあります。また、力で解決する親の姿をモデル学習し、他者に対して攻撃的になりやすい傾向も指摘されています。

2. 愛情剥奪・撤回のしつけ(Love Withdrawal)

無視する、口をきかない、離れた場所に置き去りにする、あるいは「そんな子はうちの子じゃない」「好きじゃない」といった言動で子どもの関心を拒絶する方法です。

短期的効果(即時性):子どもにとって親からの見捨てられ不安は強い脅威であるため、一時的には非常に高い従属行動を引き出します。

長期的影響とメカニズム:
罪悪感と強い不安の植え付け:「愛されなくなるのではないか」という強い見捨てられ不安や強い罪悪感(自己否定感を伴う不健康な罪悪感)を子どもに植え付けます。

他者への共感性にはつながらない:行動の動機が「相手(被害者)への思いやり」ではなく「自分が愛を失うことへの自己防衛」になってしまうため、長期的には健やかな共感性や他者配慮の心を育てることが難しくなります。力によるしつけと同様、子どもの情緒的な安定を著しく損なう危険性があります。

3. 誘導的・説明的しつけ(Induction)

子どもの行動が他人にどのような影響を与えたか(「お友達が痛くて泣いているよ」「悲しい気持ちになったと思うよ」など)をわかりやすく理由を挙げて説明し、子どもの理解や共感に働きかけるアプローチです。

短期的効果(即時性):子ども自身に納得させて行動を変えさせるため、即効性は低く、時間と忍耐が必要となります。

長期的影響とメカニズム:
共感性と自律的道徳心の内在化:他者の立場に立って考える機会を与えるため、「相手の痛みや感情を思いやる力(共感性)」が自然と育ちます。他者への配慮が自発的な行動規範(道徳性の内在化)として根付くため、成長後も他者を尊重できる社会性が培われます。

発達段階に合わせた調整が可能:子どもの年齢や認知力に合わせて言葉選びや伝えるレベルを調整することで、段階的に高い思考力と自己統制力を育むことができます。

結論と現代における示唆

ホフマンの理論が示す最も重要な示唆は、「手っ取り早く行動を抑え込むしつけ(力・愛情剥奪)」と「根気強く伝えるしつけ(説明・誘導)」では、子どもの心の中に残るものが根本的に異なるという点です。

感情的な怒りや罰は、その場の行動を止めることができても、子どもの健全な心の成長(共感性や自己肯定感)を阻害するリスクを孕んでいます。子どもの発達においては、繰り返し丁寧に向き合い「なぜそれがいけないのか」「どうすれば相手も自分も心地よく過ごせるのか」を言葉で伝え続ける(誘導的しつけ)ことこそが、揺るぎない道徳性と深い共感性を育む最良の道筋となります。

参考文献

Hoffman, M.L.(1987)The contribution of empathy to justice and moral judgement. In N. Eisenberg and J.Strayer(Eds.), Empathy and its development(pp.47-80). New York. Cambridge, New York Press.

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