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家庭のしつけ力に対する目
しつけは単に家庭内の問題ではなくなってきています。しつけのあり方はわたしたちの社会のあり方にまで影響を与えるものなのです。わたしたち、日本の社会が持っている倫理や公徳心などはいうまでもなく、学校教育ばかりで養われたわけではなく、家庭教育におけるしつけ、地域におけるしつけがあってこそ存在し得るのです。
しかし、家庭や地域の教育力低下についての問題意識はかなり前から議論されてきました。どうしたら、家庭や地域がしつけをはじめとした教育力を回復することができるのかという試みがなされてきました。
1998年6月の中央教育審議会答申
たとえば、1997年に少年による凶悪犯罪が発生した際には文部大臣が「幼児期からの心の教育の在り方」について中央教育審議会に諮問しました。それを受け1998年6月は答申「新しい時代を拓く心を育てるために-次世代を育てる心を失う危機-」で、「子どものたちの規範意識や人間関係形成力が弱まってきている」こと、さらに、「心をめぐる問題が広範にわたるという現状認識のもと、家庭、地域、学校、また社会全体に対し、それぞれにその在り方を見直し、子どもたちのよりよい成長を目指した新たな取り組みを行うこと求め」ました。中教審が初めて家庭教育について踏み込んで言及しました。
「過保護や過干渉、育児不安の広がりやしつけへの自信の喪失など、今日の家庭における教育の問題は座視できない状況になっているため、家庭教育の在り方について多くの提言を行っている」述べているように、文部省(現文部科学省)が家庭教育も注文をつけ始め、姿勢が変化した注目すべき潮目でした。
しかし、その内容には特に目新しいものがあったわけではなく、家庭でのしつけが十分でないことで、規範意識が低下し、様々な社会問題を引き起こしているということに言及したことや、家庭や地域、特に家庭には本来しつけを行う力が備わっており、現在は弱まっている、この力を回復することは困難が伴うかもしれないが可能で、重要だとしたことにあります。
答申の大部分は、「正義感・倫理観や思いやりの心など豊かな人間性をはぐくもう」「思いやりのある明るい円満な家庭を作ろう」といったスローガンで埋められ、観念的な提言で占められている。
答申が指摘するように、家庭はしつけを充分に行っていないということを否定することはできないでしょう。多くの人がそのような問題があるという認識を持っているわけです。